被災ストーリー
【自宅(A宅)/冬の早朝/父親】編
ひびが入った窓ガラスを通して、遠くの明かりも見えた。この窓も網ガラスであったのが幸いだった。そうでなければ、この窓ガラスが室内に散乱したかもしれない。
ガラス越しの明かりを見て、「火事かな」と妻と娘に言うと、思い出したように「うちも確認しないと!」と叫び、寝室に戻って倒れた石油ファンヒーターを起こし、それからキッチンに火の元の確認に行った。
私は玄関に行って電気のブレーカーを確かめた。ブレーカーは落ちていたので上げてみたが、やはり電気はつかない、少し考えて、やっぱりブレーカーは落としておくことにする。停電が復旧した時に、通電火災が発生する可能性があるためだ。娘にも、家の中のコンセントを抜いておくように言った。倒れた家具の下敷きになったりして、痛んでいるコードがあるかもしれない。
そもそも停電しているのでテレビがつかないが、幸いにしてスマートフォンはつながっている。混み合っているのか、通信速度は遅いが、既に地震の情報が始まっていた。首都圏で大きな地震が発生し、震度6強、というニュースタイトルが見える。
なかなかそこから先の情報にたどり着けないでいると、娘がSNSでいろいろと情報を探してきた。中には「東京・横浜に津波」「スカイツリーが倒壊」など、明らかに間違った情報と思えるようなものもあるが、震源が千葉県北西部であるらしいこと、やはり火災が発生していること、そしてお隣のように倒壊している建物が他にもかなりあり、閉じ込められている人を助けるための手助けの要請もあるようだ。
私たちもお隣の様子を見に行くことにした。外は寒いので、十分に着込んで隣の家に向かう。