被災ストーリー

【自宅(A宅)/冬の早朝/父親】編

 隣の家は、1階の柱が一部、折れてしまったようで、家全体が道路の方に傾いて倒れかけている。大声で名前を呼ぶと傾いた2階部分から、子どもの泣き声が聞こえてくる。しかし大人たちの声は聞こえない。隣家には、私たちと同年代の夫婦とまだ学校に入る前の子供、それにご両親が住んでいる。
 近所の人も数名集まり、携帯電話で119番に連絡しようとした人もいたが、つながらない。
 私は、集まった人たちに「私たちで助けましょう」と声をかけた。協力して慎重に、崩れた家屋の中をうかがいながら、手探りの救助活動が始まった。私は、車のライトであたりを照らした。ちょうどガソリンを入れたばかりだったし、ハイブリッド車なので多少の時間ならバッテリーも大丈夫だろう。助け声が聞こえるよう、エンジンを切ってバッテリーで点灯するようにする。
 救助に加わっていた人の一人が、「柱がボロボロだ、腐ってるのか、シロアリなのか・・・」と話していた。やっぱりそうか。我が家もひとごとではなさそうだ。安全が確認できるまでは気を付けないといけない。