被災ストーリー
【自宅(A宅)/冬の早朝/父親】編
自宅の寝室で寝ていると、突然下から突き上げるような揺れに襲われて目を覚ました。
隣で寝ていた妻も飛び起き、二人で身を固くしていると、箪笥が勢いよく倒れ込んできて私たちは下敷きになった。
揺れが収まり、二人ともどうにか這い出たが、箪笥が当たった肩が上がらない。
停電して真っ暗な中、部屋の外に出ようとしてベッドを降りた瞬間、猛烈な痛みが足を襲った。チェストにおいてあった陶器やフォトケースが割れ、床中に散らばっていたものを思い切り踏んでしまった。暗闇の中でも、どんどん出血しているのが分かる。
妻を残し、一階の別室の両親を見に行くと、床に敷いた布団で寝ていた両親にも、まともにチェストが倒れ込んでいた。呼びかけたが反応がない。足にケガをしている私には、古くて重い箪笥をどかす力も出ない。
二階の子供たちの返事もない。そこに、強い余震がやってきた。
家がきしむ。
我が家の建つ地区は、平成に入ってから新築・改築された一戸建て住宅が多い。我が家も建物の構造自体は、よく言われている「旧耐震基準」で建てられたものではなく、「新耐震基準」のはずだ。しかし、家のきしむ音は続き、そのうち大きな音とともに、家が傾いた。柱が折れたのか、子供たちが寝ていた二階部分は、道路に飛び出すように落ちてしまった。
気づけば妻の姿もない。
がれきだらけの隙間を、必死の思いで家族を助け出し、玄関か窓から外に出ようとするが、力も出ずなかなか前に進めない。何分たったのかわからないが、家のきしむ音は続いている。
とうとう、どこからか火が出たようで、黒煙が私のまわりにも漂ってきた。早くしないと、一酸化ガス中毒で動けなくなってしまう...