被災ストーリー

【自宅(A宅)/冬の早朝/父親】編

 声をかけながら、作業を続けるうちに徐々に空が明るくなり、作業がやりやすくなる。妻がご近所に声をかけ、救助に加わる人がだんだん増え、そのうち近隣の自主防災組織や消防団の方々が救助資機材を持って駆け付けてくる。2階部分で声を出していたお子さんを、まずは救い出すことが出来た。次に、タンスの下敷きになっていた息子さん夫婦が無事に救助される。
 その後、かなり時間はかかったものの、1階で寝ていたおじいちゃん、おばあちゃんも無事に家の中から救助され、集まっていた人たちから歓声があがる。
 ただ、皆が生存した状態で救助されたことで安心してはいけないようだ。消防団の方が、「長い間、重い物の下敷きになっていると、あとで『挫滅(ざめつ)症候群』で亡くなることもあるから」と注意をしている。消防団と自主防災組織の人が手分けして、5人を災害拠点病院に搬送していった。

 夜が明け、まわりの状況もわかるようになってきた。我が家では、家具の固定など、防災対策をある程度とっていたこともあり、幸い大ケガもなく、家族も無事である。もし、我が家で防災対策が何もしていなかったら…と考えるだけでもゾッとする。
 でも、よかった。無事なので今はまず、避難や自宅の片づけの前に、隣近所同士で一人でも多くの人を助けなければ。